ヤマハマリン北海道製造株式会社

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カキ養殖(北海道厚岸町)

W-38-CF3
和耕丸 カキ養殖

大漁ニュース 194号掲載(2017年)

通年で出荷できる牡蛎は国内でも厚岸の牡蛎だけ。
アイヌ語で「牡蛎のある場所」を意味する「アッケシイ」が町名の由来だとも言われるほど、古くから牡蛎養殖の盛んな場所です。

稚貝は4月~6月の初旬に厚岸湖内の養殖筏に吊し、その後、厚岸湾内の養殖筏に移す。

道東の釧路と根室のなかほどに位置する厚岸は、西からせり出した尻羽岬と湾口に浮かぶ大黒島に囲まれた厚岸湾が広がる穏やかな海です。
さらに湾の奥には、広大な森や湿原を流れてきた別寒辺牛川のミネラル豊富な淡水と、太平洋のプランクトン豊富な海水が混ざり合う汽水湖の厚岸湖が広がります。
そんな厚岸の最大の名物はカキ。
広島や宮城などカキ養殖が盛んな場所は数多くありますが、一年を通じて出荷できるのは厚岸のカキだけです。
その理由は厚岸の海水温の低さ。
低温でカキの成長が遅くなる性質を利用して出荷のタイミングをコントロールしているのです。
また、ゆっくり育つことで厚岸のカキは栄養をたくさん取り込み、濃厚な味の身が育つと言われています。
種となる稚貝は、宮城県の気仙沼などから仕入れたもので、それを4~6月初旬に厚岸湖内の養殖筏に吊します。
その後、凪のときを見計らって、厚岸湾内の養殖筏に移します。
沖の塩分の多い海で3カ月以上育てた後、再び塩分濃度が低く植物性プランクトンの豊富な厚岸湖に移すことで、厚岸のカキはより多くの栄養を蓄え、さらに熟成していきます。
そして、出荷のタイミングを見計らって、適宜水揚げするというのが厚岸のカキ養殖の流れです。

厚岸でともにカキ養殖を営む畠山茂一さんと畠山雅充さん。
栄養をたくさん取り込み、濃厚な味の身が育つという厚岸のカキ。穏やかに成長を促す厚岸の海水温の低さもポイントだ。
広々としたW-38のデッキ。作業性、積載量も豊富だ。
積み荷を満載してもよく走るし、作業時の安定性も素晴らしいというW-38-CF3。

厚岸湖と厚岸湾を繋ぐ厚岸大橋のたもとで養殖業を営む畠山茂一さん(70歳)は今年の4月、厚岸のカキ養殖船では初めてとなるW-38(船外機F225F×2)を進水させました。
それまで使っていたW-32では、カキを満載したときにパワー不足を感じたという畠山さんは「W-35を見に行ったんだけど、W-32とそう変わらない印象だったので、宮城までW-38を見に行って、これしかないと思って」と振り返ります。
茂一さんと一緒に海に出ている畠山雅充さん(37歳)も「この辺りじゃ一番速いね、北海道でも一番じゃないかな(笑)。積み荷を満載してもよく走るし、作業時の安定性も比べものにならない」と満足げです。
カキ養殖で難しいのは、カキの入ったカゴをどの深さに持って行くかだと茂一さんは言います。
「例えば、大雨が降ったときなんかは、湖の水面近くは完全な真水になっちゃうので、浅いところに吊してあるカキは死んでしまう。その前にカゴを深いところまで下げておけば牡蛎は助かるんだよね。沖のカキは問題ないんだけど、そこが汽水湖で養殖する難しさだね」
濃厚な厚岸のカキの旨味は、カキを我が子のように手塩に掛けて育てる漁師さんたちの情熱によって熟成していくようです。

カキの入ったカゴをどの深さに持って行くかがカキ養殖のむずかしいところと茂一さんは言う。