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日本一のノリ生産地に躍動する新鋭漁船(佐賀市東与賀漁港)

DW-480-0A
喜竜丸 日本一のノリ生産地に躍動する新鋭漁船

大漁ニュース 193号掲載(2016年)

筑後川と矢部川という一級河川が栄養分たっぷりの水を流し込みます。
干満差は最大で6m。
ノリの生育にとって抜群の環境に恵まれている有明海は、日本一のノリ生産量を誇ります。
2016年秋、本格的なノリ養殖の作業シーズンを控えたその有明海に、ヤマハの新たなノリ養殖船、DW-480-0Aが登場しました。
今回はその注目の新鋭船が納艇された、佐賀市東与賀漁港の〈喜竜丸〉を紹介します。

東与賀漁港にぎっしりと並ぶノリ養殖船。〈喜竜丸〉は抜群の存在感。

全国でも有数のノリの産地、佐賀県佐賀市の東与賀漁港を訪れると、支柱に舫われたヤマハのノリ養殖船がぎっしりと並んでいる光景が広がります。
現在、有明海に面した福岡県、佐賀県、熊本県には合わせて2,700軒のノリ養殖経営体があるといわれていますが、その多くがヤマハ漁船を使用しているのです。
今から47年前、ヤマハが初めて開発した量産型のFRP製漁船は、有明海のノリ養殖船でした。
それまで木造船が主流だった日本の漁船の急速なFRP化は、ここ有明海から始まったのです。
以来、木造船に取って代わられたFRP製漁船は、利用者の声に耳を傾けながら改良に改良を重ね、進化を遂げていきます。

久米利喜さん(右)と裕喜さん親子。最高のノリを消費者へ。新しい船になり、やる気も増す。
スクエアバウは波の打ち込みを防ぐだけでなく、艏デッキでの作業にも安定感を発揮する。

「養殖は大変な仕事ですが、ひとりでも多くの人に佐賀の美味しいノリを味わっていただきたい。それがこの仕事のやりがいです」というのは、高校卒業後から父親とともにノリ養殖に従事している久米裕喜さん(23歳)です。
DW-480-0Aは、そうしたノリ養殖に携わる人々の気概に応えるべく、お客様の要望に耳を傾けながら、ヤマハ漁船の古里ともいえる有明海に誕生した新鋭船です。
数多く並んだノリ養殖船の中でも裕喜さんが乗る「喜竜丸」の存在感は抜群。
スクエアバウと呼ばれる、ヤマハのプレジャーボートに採用されている独特の前部ハル形状は、ボリューム感があり、流れるような曲線をベースにデザインされたブリッジとの組み合わせは、まさに「次世代漁船」。
そして、その変化は外観にとどまらず、作業効率の大幅な向上に寄与しました。
〈喜竜丸〉の船主はこの道30年のベテラン、裕喜さんの父親、久米利喜さん(60歳)です。
利喜さんにとってDW-480-0Aは3隻目の漁船となりますが、「ますます仕事がしやすくなった」と新たな船に太鼓判を押します。
「デッキが広くなって、海の上でもぐらつくようなことがなくなった。走っていても波乗りがよく、快適だね。(スクエアバウは)支柱立ての時など艏で作業する際に安心感がある。最近は積載するノリの量も多く、その点でも満足してるよ」(利喜さん)
後継者の裕喜さんはブリッジのデザインに惚れ込んでいるよう。
グラフィックも自分で考えました。
「最近派手なグラフィックも流行っているんですが、落ち着いたカラーとデザインを選びました。性能に関しては、養殖は時化でも休むことができないので、どんなときでも安定してしっかりと走ることのできるこの船は頼もしいですね。船が新しくなったことで仕事に張りもでました」

支柱立てから網の手入れまで、特に生育期間から摘み取りまでの間は一日も休むことがないというノリの管理。それだけに船の信頼性は重要だ。

取材当日(2016年11月)は摘み取りの準備期間。
養殖家の人々は種苗が付着した網から海中に吊した胞子を取り外す作業に追われていました。
現在は摘み取りのシーズンが山場を迎え、〈喜竜丸〉も良質のノリを満載して有明の海を快走しているはずです。