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新たな領域に踏み出した次世代漁師(青森県大畑町)

DX-120-0A
第六十八 金亀丸 新たな領域に踏み出した次世代漁師

大漁ニュース 189号掲載(2014年)

下北半島の津軽海峡沿岸域に位置する大畑町は、イカ釣り漁や林業で知られる自然の豊かな地域です。
津軽海峡は北海道を臨む海峡ですが、西からは対馬海流の分流である津軽暖流が東へと流れ込み、この大畑の東方沖合で寒流である親潮と合流し、豊饒の海を形成しているようです。
イカ釣りに次いで基幹漁業とされるのが、現在、4ヶ統で経営されている定置網漁。
佐藤敏美さんが親方として乗り込む〈第六十八金亀丸〉(DX-120-0A)の網起こしに同乗してきました。

2014年4月に進水したDX-120-0A、〈第六十八金亀丸〉。定置網漁船として抜群の作業性、安定性で金亀水産の経営を支える。

大畑の定置網は季節によって漁獲が異なりますが、10月から12月にかけては秋鮭、スルメイカ。
1月から4月にかけてはヤリイカ。
この時期は最たる稼ぎどき。
大型のヤリイカは値も良く、2ヶ月間で5,000万円もの水揚げを得ることも。
4月から5月にかけてはサクラマス、さらに6月はマグロやブリはじめとする中・大型回遊魚。
7月から9月にかけては休漁期間。
もちろん、その間に仕事が無くなるわけでなく、秋からの漁の準備、新たな網の設計から製造、陸に上げた網の手入れなどを行います。

金亀水産の取締役であり、金亀丸の親方、佐藤敏美さん。亡き父から引き継いだ定置網経営で次世代の漁業を担う。

「不思議なことに海が汚れると漁獲は減るのですが、ヤリイカだけは逆で、汚れているなあと思う時ほど網に良く入るんです。網を敷置する場所は、漁家ごとにローテーションで変えていきます」(佐藤さん)
いってみれば水揚げは時の運。入るときも入らないときもあります。
それでも佐藤さんは「でも入った時の水揚げは大きい。それがこの仕事の魅力ですね」と楽しげに語ります。
どちらかといえば「攻め」よりも「待ち」の漁といえる定置網漁ですが、一般的には乱獲に陥りにくい、環境に優しい漁と評価されています。
佐藤さんは、こうした漁を基幹とし、これまでの個人経営から会社組織として定置網漁を経営していくことを決意。
母親を代表取締役とし、自らは取締役として、また、船上では親方(船頭)として、株式会社金亀水産を立ち上げました。
そして、2014年の4月には現在の〈第六十八金亀丸〉(DX-120-0A)を建造、進水させました。

大畑沖に小型定置を4基。次から次へと網起こしを行っていく。

この日、〈第六十八金亀丸〉の網起こしは6時からスタート。
霧雨に煙る海の上、4基の定置網の間を次々に周りながら見せるその走りは勇壮そのもの。
また現場に到着してから始まる網起こしでは、抜群の安定性や作業性の良さを発揮します。
次々と網起こしをしながら、社員となった多くの乗組員の先頭に立って、洋上で指揮を執る佐藤さん。
この日は、漁の谷間ということもあって、あいにく、大漁とはいきませんでしたが、そこには、大畑の漁業を盛り立てていく気概がみなぎっていました。

アンコウ、サバ、小型のブリやサクラマスがこの日の漁獲。